家族のコアバリューをつくろう。/ 家族文化のデザイン①

家族のコアバリューをつくろう。

 

自宅にいる時間が増えると、家族と過ごす時間も長くなります。それは、改めて「家族と向き合えるチャンス」でもあります。

わたしは約1年間半、リクルートホールディングスでリクルートの働き方改革を進化させることをミッションに、組織文化づくりのR&Dを担当してきました。
(コピーライターとしては、我が道を行くキャリアを邁進中です笑)

その裏テーマとして、働き方改革のノウハウを、家族改革に転用する実験をしていました。わたしの人生実験を通したノウハウを、「家族文化のデザイン / Family Culture Design」として、数回にわけて公開していきます。

かけがえのない家族文化を築いていくことで、家族体験は大きく変わります。家族を「幸せを最大化する居場所」に進化させるヒントを、ひとつでも多くお届けできればと思います。
※この記事で「家族」とは、血縁&婚姻関係に関わらず、多様なパートナー関係も対象にします

参考:リクルートホールディングスEmployee Experience Design部の記事

0、なぜ「家族文化」が必要なのか?

家族とは、人生の中でも長い時間を共有する、ベースとなる組織です。
会社よりも長く所属しなければならない、人生にもっとも影響を与える組織と捉えることもできます。

けれど家族という存在が、あたり前すぎるからこそ、あまり深く「家族とは何か?」を考える機会は少ないと思います。
「家族だから、なんとなく一緒に暮らす」状態よりは、一人ひとりが家族で生きる意義を感じ、お互いを尊重できる状態のほうが、あたり前ですが家族体験の質も高まります。

あるアメリカの調査では、仕事の「意義」を理解して働いている人がその仕事に定着する確率は、そうでない人と比べて8倍高いそうです。また意義を理解して働くことで、仕事への満足度が2.2倍高まるという結果も出ています。

これは「会社と個」の関係だけではなく、「家族と個」の関係でも同じです。
一人ひとりの個性や強みがちがうからこそ、家族の意義や価値観を共有することで、お互いを支え合うことができる。日常のなにげないことにも、より価値を感じることができる。

わたしも1年間以上、いろいろと試行錯誤しながら実験してきましたが「家庭は、幸せづくりのクリエーティブな場」にもなると感じます。みなさんのご家庭でも、いろいろと実験してもらいたいです。

第1回目となる今回は、家族の「コアバリュー」をつくることについて話します。コアバリューとは、『大切にする価値観』のこと。家族という居場所をどう捉え、どんな価値観をもって、日々考え、行動するのか。つまり家族の生き方において核(大黒柱)となる部分です。

家族のコアバリューが言語化されると、さまざまな家族体験が変わっていきます。では早速、家族のコアバリューの作り方についてご紹介します!

参考:コア・バリュー・リーダーシップ

1、家族のコアバリューをつくってみよう

家族会議ワークショップを開いてみましょう。
夫婦だけでもよいし、子どもを入れてもOKです。もしかすると、ふだん話す機会が少ない家族は、いきなり全員で話すののにハードルを感じる家族もいるかもしれません。その場合は、一対一で、家族について対話するところから始めるのも手です。

<家族会議ワークショップの要件>
時間:1〜1.5hくらい
場所:リラックスできる場所(旅館とかに泊まりに行くのも◎)
必要なもの:付箋とペン

順序①:まず、なぜコアバリューが必要かをみんなに共有しよう

まずは、言い出しっぺのリーダー(あなた)から、なぜ家族のコアバリュー(家族が大切にする価値観)を考えることが大事なのか語りましょう。「家族みんながより幸せに過ごすために、家族について考えてみよう!」くらい簡単なことで構いません。
前章の<0、なぜ「家族文化」が必要なのか?>で書いたようなことに触れていただいてもOKです。

そして、以下の3つのルールを守るよう伝えると、より本音を引き出しやすくなりますのでご活用ください。

<家族会議ワークショップの3ルール>
・質より量!
・批判しない!
・楽しくやる!

順序②:質問に答えながら、要素を出してみよう

準備ができたら、下記の質問を活用しながら、各自の意見をポストイットに書き出し発表し合いましょう。ここでは正解はないので、全員が発言し、たくさん量を出すことがポイントになります。リーダーのあなたは、家族全員が発言できるよう、問いかけてみてください。

<質問案>
※この中から、あなたの家族が話しやすいものをピックアップしてお使いください

・どんな家族になりたいと思うか?
・家族でどんなことをやっていきたいか?
・家にいるときはどんな気分でいたいか?
・お互いどのような関係をもちたいか?
・お互いにどういうふうに接したいか?
・わが家に本当に大切なものは何か?
・わが家のもっとも重要な目標とは何か?
・家族一人ひとりの才能、素質、能力はなにか?
・家族の一員として、一人ひとりの責任はなにだろう?
・わが家における行動のガイドライン、原則はなにだろう?
・わが家のヒーローは誰だろう?その人のどんなところが好きなのか、どんなところを見習いたいのか?
・尊敬する家族はどんな家族か?なぜそう思うのか?
・家族として社会にどう貢献できるだろう?どうしたらもっと奉仕の精神を持つことができるだろう?
・家族が、私たちらしい道を進んでいると思うときはどういうときか?
・家族が、私たちらしい道を進んでいないと思うときはどういうときか?
・どうしてそうなったのか?どうしたら軌道修正できたのか?

順序③:要素をまとめて、優先順位をつけてみよう

出てきた要素をカテゴリーにわけてみましょう。
似ている要素同士を集めて、ざっくりといくつかのカテゴリーにわけることができれば十分です。

カテゴリーわけが終わったら、つぎは優先順位をつけていきます。
各自が、自分にとってもっとも大切な価値観を5つ選んでもらう、みたいな投票制にすると進めやすいです。もしくは、各自が選んだ「5つの大切な価値観」から、ひとつずつ削っていき「最終的にひとつ選ぶなら何か?」を問いかけてみるのも効果的です。

ポイントとしては、正しいことや守るべきルールではなく、ワクワクする!やってみたい!ものを選んでみると、じぶんに正直になることができます。頭でなく、心で「幸せ」を感じるものを選んでみてください。

また、「家族にとって重要な価値観」を必ずしもひとつに絞らなくても大丈夫です。3〜5以下にできると、コアバリューとして文章化しやすくなるので、5以下を基準に優先順位を決めてみてください。家族全員が、「これは、わたしたちの家族にとって大切な要素だ!」と心から思えるものを発掘してみましょう。

順序④:コアバリューをことば化してみよう

あなたの家族にとって、大切な価値観が絞れたと思います。つぎは、コアバリューとして言語化してみましょう。美しい文章にまとめる必要はありません。
・一行のフレーズ
・いくつかの箇条書き
・ひとつの長文
・絵やシンボル
など体裁は自由です。

ちなみに、ワークショップやコアバリューの言語化についてより詳しく知りたい人は、こちらの本をオススメします。

「7つの習慣 ファミリー

コアバリューの参考事例なども載っているので、一部、抜粋します。
※上記の書籍内では「ミッションステートメント」と表現しています。

例1:「愛し合う。助け合う。信じ合う。時間、才能、知恵を生かして他者に祝福をもたらす居場所にする」

例2:「幸福家族みんなが帰ってきたいと思う家にしよう。親切に敬意をもって接し、支え合おう。」

他にも「いろんな思い出をつくる。」「趣味を楽しむ。」みたいな具体的なことでも良いと思います。ちなみに筆者のわたし(銭谷)の家族のコアバリューは、
「お互いの可能性を広げるのを楽しむ。わたしたちの人生に価値のあるものづくりを通して、社会に貢献しながら生きていく。」です。

家族とは、人の成長過程を、もっとも長く見ることができるパートナーでもあります。だからこそ、死ぬまでお互いの可能性を楽しみ続ける、そういう関係でいたい。そして、お互いの可能性を楽しみながら、じぶんたちや、社会にとって幸せなものづくりをしていきたい。そう思ってつくりました。

このコアバリューがあることで、わたしは家族(妻)と向きあう姿勢が変わりました。また妻といないじぶん一人の時間も、自分が成長することで、もっと妻の可能性を引き出すことができる、新しい楽しみ方ができる。そう考えるようになり、家族との時間も、家族以外の時間にも、より価値を感じるようになりました。

ただ、一回の家族会議ワークショップで、コアバリューを完璧に言語化するのは難しいと思います。プロのコピーライターでも難しいです。
どんな家族の家族文化も、常にプロトタイプです。何度も、考え、実践し、話し合い、手直ししていくことで、全員が納得できる「これが、わたしたちの家族のコアバリューだ!」信じられることばに磨かれていきます。

ですので、まずはワークショップ内の1〜1.5hのなかで、できる範囲でコアバリューを言語化することだけでも、120%目的は達成です。美しい文章にまとまらなくても、家族一人ひとりが、家族の意義とは何かを考えたという体験自体が、とても大きな一歩です。

また言語化したコアバリューは、忘れないようにリビングルームなどの壁に貼っておくのも効果的です。

2、コアバリューを、体験としてデザインしよう

今回の記事では「家族のコアバリュー」をつくることを紹介しました。
ことばそのもの以上に、ことばをつくるプロセス自体が、家族体験に影響を与えます。

ただし、ことばをつくっただけでは、規範やルールでしかありません。
ことばを、文化にしていくためには、日々の「体験」をデザインしていくことがポイントになります。大切にする価値観を、みんなで体験して、各自がじぶんのことばで「じぶんの家族のコアバリュー」を語れるようになって、はじめて家族文化として育っていきます

リクルートホールディングスでも、「Employee Experience Design」という部署をたちあげ、働く体験(入社前〜退社後まで)に、どのような体験があると、社員全員が自社の企業文化をもっと好きになり、体現していけるのか様々な実験をしていました。

家族でいうなら、「Family Experience」です。日々、家族と暮らす体験のなかで、じぶんたちの家族文化をもっと好きになる。大切にするコアバリューを自然と実践し、理想の状態に進んでいける。そんな体験をデザインしていくのがポイントです。
家族体験のデザイン方法は、また次回以降で紹介していきますね。

familyculture

今回の記事の最後に、わたしが好きな名言を紹介します。
前述の『7つの習慣ファミリー』の著者スティーブン・R・コヴィーは、「人生とは、最終的に家に帰っていく旅路である。」と語っています。

かたちのあるものは、いつか失われる。だから、心を残したいと人は願うのではないでしょうか。肉体がこの世を去ったあとも、その人の存在は家族や周囲に人のなかで生き続けます。

会社が「価値」を最大化させるための組織なら、
家族とは「幸せ」を最大化させるための組織。

そう捉えると、会社が、社会的インパクトを最大化するビジネスの進化を担っているのなら、家族は、幸せを最大化する「価値観」の進化を担っているとも言えるのではなでしょうか。

 

コロナウイルスの感染拡大で、ウイルスそのものだけではなく、人の偏見や差別なども浮き彫りになっています。DV(家庭内暴力)や離婚なども増えていると聞きます。

こういう状況だからこそ、一人ひとりが、目の前の家族と向き合い、自らが大切にする価値観を振り返る。大切な人とともに、人としての価値観そのものを進化させていくことが、世界平和にもつながるのではないかと思っています。なにげない目の前のことの連鎖で、世界は成り立っているのですから。

わたしも、家族を大切に、そして広告業界を飛び出した圏外なコピーライターとして、社会&個の人生にとって「価値がある!」と心から信じられることをやって生きていきたいと思います。

 

では今回はこの辺で!Peace Out!

©︎kengai-copywriter 銭谷 侑 / Yu Zeniya
※もし実践されたという方がいらしたら、ぜひ感想を送ってもらえると嬉しいです