今回のブログでは、じぶんらしい働き方・生き方のヒントになるかもしれない「人生最後のしごと発想」を紹介します。
みなさんは、目の前の仕事に意味があるのか、何につながっているのか。悩んだり考えたりしたことはないですか?
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電通時代の上司が、こんなことを言っていました。
「しごとの対価は、しごとである」
たとえば広告クリエーティブの世界なら、小さなキャンペーンをヒットさせていくことで将来的には、日本国民ならだれでも知ってるような巨大キャンペーンをやりたいという人が多いだろうし、ビジネスマンの世界なら、キャリアアップしたり出世することでよりじぶんが組織や社会でやれることを増やしていきたいという人が多い気がします。
ただぼくは、auやソフトバンクのような巨大キャンペーンを担当したいと思わないし、(そういう仕事も、すばらしいし、価値があると思うが)ビジネスマンとして出世したいという気持ちもありませんでした。
8年間も広告クリエーティブをやってると、ある程度、目の前でじぶんがやりたいことはすべてやりきってしまう。人より努力をすれば、手に入れたいものはすべて手に入れてしまう。
そうなると、目の前の仕事が、何につながっていくのか、どう生きればいいのかちょっとわからなくなるときがやってきます。(業界に関わらず、30歳付近の社会人に同じように悩む人が多い気がします)
そんなとき衝撃を受けた、映画ありました。それは「人生フルーツ」という映画です。
※注意:すこしネタバレを含みます
※まだDVD化されていませんが、ふたりの人生が書かれた本はあります 「ききがたり ときをためる暮らし」
この映画は、老夫婦がていねいに生きる姿をたんたんと描いたドキュメンタリー。
元建築家の夫と、それを支える妻がじぶんたちで設計した家に住み、じぶんたちで育てた野菜を食べ、じぶんたちのペースで生きていく姿をそのまま映像化した作品です。
ほんとうに美しい映画なので、ぜひ見ていただきたいです。その映画のなかでは、多くの発見があったのですが、個人的にいちばん発見があったのは元建築家の夫のところに「人生最後のしごと」がやってくるシーン。
クライアントは、地方にある精神病棟。そこは、東京で働きすぎうつ病になったサラリーマンたちが運びこまれる病院らしいのですが。ちょうどリフォームをするタイミングだったらしく、その病棟の担当者が、元建築家の夫のところにあるオリエンをもっていきます。※オリエンとは、仕事をお願いされるときの「お題」のこと
『人間らしく生きるとはなにか、人間性とはなにか、教えてください』
そのシーンをみたとき、青天の霹靂でした。そんなオリエンが、この世にあるなんて。ふつうに社会人をしていたら、そんな仕事のお願いはこない。たいていの場合、「もっと商品を売って欲しい」「アプリのDL数をアップさせたい」「企業のイメージアップしたい」のようなオリエンだろう。
ふつうに会社員をしてる人には『人間らしく生きるとはなにか』なんてオリエンはやってこないのだ。
元建築家の夫が、そのオリエンを受けたとき『これは、ぼくの人生最後のしごとだと思う。とくにお金はいりません』といって、すらすらと、プランを紙に書き出した。夫婦が、丁寧に、大切に人生を歩んできた経験が、すべてそこに現れているようだった。
そしてその夫は「人生最後のしごと」をやりおえて、まもなく亡くなった。人生の使命を終えたように。
そう、いつか人間は死ぬのだ。いつか「人生最後のしごと」がやってくるのだ。
「しごとの対価は、しごと」だとしたら、人生最後のしごとをするために目の前のしごとがある、と捉えることもできる。
ぼくは「人生フルーツ」をみてから、仕事やプライベートで出会った人に「人生最後のしごとが来るとしたら、どんな仕事をしたいですか?」と聞くようになった。
ぼくが、人間として面白いと感じる人は、答えられる人が多かった。具体的でなくても、ふわふわとしたイメージで。
そういう人は、とても健康的に働くということに向き合っている人が多い。働くということを、じぶんの人生のなかでも価値化できているのだ。
目の前の仕事に悩んだら、「人生最後のしごと」を考えてみるのはどうだろう。なんのために働いているのか。そのとき、目の前の仕事をどう捉えるといいのか。ヒントが得る、よいきっかけになると思います。
ちなみに、ぼくがやりたい「人生最後のしごと」を明確に決まっている。(変わるかもしれないし、変わってもいいと思っているが)
どんなクライアントからでもいい、もしくは、じぶんがクライアントでもいい。『愛とは何か』というオリエンで、人生最後のしごとができるといいなあと思っている。
60年後、70年後、夫婦で生きたすべての経験をいかして、じぶんが「愛」というお題にどんなアウトプットを出すのかとても興味がある。そのときのために、夫婦を大切に生きたいと思う。
「人生最後のしごと」を考えることで、いつのまにか「つくりたいものがなくなる恐怖」から解放されていたのである。目の前のすべての仕事に夫婦で生きるすべての経験に価値を感じるようになっていたのである。
夫婦で立ち上げたデザインファーム「the Tandem」は、デザインファームとして賞をとろうとかかっこいい作品をつくろうなんて微塵も思っていない。それは電通にいてもやれたことだから。
だれよりも幸せを発見し、夫婦での生きた証をすべてコンテンツにしていく。
「未来のじぶん自身に興味がある」というのは、賞をとるとか、大きな仕事をするとかそんなことよりも、とても普遍的で大きなモチベーションになるのだ。
そして趣味ではじめたこのブログだったが、ブログを通して、30代の起業家やじぶんなりの生き方を模索する多くの人と出会うことができた。ぼくらと同じように大企業をやめた人。夫婦で起業した人。東京を離れ、地方で起業をした人。
日本は衰退するなんて言われているが、30代前後の世代は、いままでの常識をこえて新しい世界を、新しい生き方をつくろうとしている人が驚くほど多い。
きっと、ここ数年で、世の中は大きくシフトすると確信している。このブログでは、じぶんたちの人生実験はもちろん、人生実験を通して出会った魅力的な人たちの生き方、働き方も紹介していきたいと思います。
圏外コピーライター 銭谷