ふつうだったら、各部屋の表札は「101号室」などと表現するでしょう。それを「番地」で表示することで、各部屋が「家」という概念に変わっている。老人ホーム全体が「街」という概念に変わっているのです。住んでいるご老人の視点からみると、部屋に住んでいる感覚から、「家」に住んでいるという感覚に変わっている。またヒアリングしたところ「きょうは、2丁目の人と、3丁目の人でお茶会しましょうねえ」のような、住人同士のコミュニケーションも生まれているという。
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おそらく多くのコピーライターは、この表札のコピーに興味を示さないと思います。
けして「うまいこと」を言っていることばでもないし、新しい表現を開拓していることばでもありません。地方の老人ホームにある、なんでもないことばです。
ただコピーとは、けして言葉遊びの技術ではなく、人の認識や行動を変える、ことばのアイデアの技術である。あらゆるモノ、サービスの価値を「A→B」へと変えていく技術であると考えています。コピーライターの最大の使命は、人がより幸せになる事実を発見すること。人がより幸せになるために、世の中の概念を再編集していくこと、だと。
これから、超高齢化社会が、日本にくると言われます。
人は歳を重ねるたびに、身体は衰え、できないことが増えていきます。ただいくら歳をとっても、概念は進化させることができる。概念が変われば、人の住んでいる世界も変わる。できることだって、幸せだって増やすことができる。
課題先進国である日本で、ことばができることは、たくさんあると思うのです。バブル期に、糸井重里さんをはじめ多くのコピーライターが活躍したように、課題バブル期のいま、ことばの技術を持つ人間には多くのチャンスがあるはずだと。
ちなみに夫婦で経営してるthe Tandemを、「人生を良くするデザインファーム」と、名乗っているのもその理由です。
ことばとデザインの技術で、人の幸せにつながる、ものづくりをしていきたい。コピーライターと、アートディレクターによる、今までにない新しい挑戦を、ひとつでも多くしていきたいなあと思います。
このブログでは、広告ではないけど世の中の価値を変えている、そんな「圏外なコピー」を紹介していこうと思います。もし、みなさんの知っている「圏外なコピー」があればぜひ教えてもらいたいです。(「お問い合わせ」で受付中です!)
圏外コピーライター 銭谷侑