すべての人に使える「新しい働き方のシステム」/人生実験シリーズ②

 

3月末に、電通を退社してから、よく言われたことばが2つある。

「よく夫婦で、電通を辞めれたね」

「転職?独立?おめでとう!」

電通のダブルインカムだったのでお金的には恵まれていたし、じゆうに働かせてもらえる環境もそろっていた。それでもなぜ電通を辞めるという決断に至ったのかというと。

転職でも、独立でもない転職でも、独立でもある「新しい働き方」を発明したからです。最大限守りながら、最大限攻められる「新しい働き方」のシステムで生きてみようと思ったからです。

今回のブログでは、サラリーマンでも、起業したい人でもすべての社会人が使える「新しい働き方」のシステムを紹介していきます。

 




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「新しい働き方」は、資産運用にヒントがあり

 

「卵は同じ籠(かご)に入れるな」という格言があるが、資産運用においてリスクヘッジの基本は「分散」だ。

たとえば、日本円だけでなく、外貨も持つこと。銀行口座に、日本円をたくさん持っていたとしても、円の価値が下がるかもしれないしインフレが起きるかもしれない。

だから資産を、国内外の債券、国内外の株などに分散させておくことが、最大限のリスクヘッジをしながらチャレンジもできる、というのが資産運用の考え方だ。

ものすごく乱暴に言うと、安全資産として、日本と外国の債券。リスク資産(チャレンジ資産)として、日本と外国の株。それぞれ1/4ずつ持つことが、バランスのいい構成(ポートフォリオ)だと言われている。

ちなみに資産運用の基礎を知るなら、以下の本がおすすめです。
【参考】忙しいビジネスマンでも続けられる 毎月5万円で7000万円つくる積立て投資術

いままでの資産運用の話は、お金という資産をどう運用するかの話だ。

ただ人生においての資産は、「お金」だけではない。すべての人が平等にもっているもうひとつ、大きな資産がある。

それは「時間」だ。「時間」というもっとも貴重な人的資産をどう投資するか、そのポートフォリオをつくることが人生を豊かにするのに役立つ。

つまり「労働時間のポートフォリオ」をつくることは、すべての社会人にとって新しい働き方のシステムになるのだ。


「労働ポートフォリオ」をつくろう

じっさいに「労働ポートフォリオ」をつくり、働き方がどう変わるか見ていこう。

多くの大企業サラリーマンの「労働ポートフォリオ」

おそらく多くのサラリーマンの労働ポートフォリオはこのような状況だろう。A社の正社員という「安全労働」だけだ。

この労働ポートフォリオは安全にみえて、分散ができておらず、じつはリスクが高い。

「安全労働」だけで、労働ポートフォリオを構築するのは、日本円しかもっていないのと状況と同じなのだ。

たとえばリストラされたら、収入がゼロになる。退職したあとに、会社以外に居場所がなかったビジネスマンは社会に居場所がなくなってしまう。

東芝のような超大企業も経営が傾くことだってありえる現在、「安全労働」だけに頼るのはけして安全ではないのだ。

企業する人の「労働ポートフォリオ」

リスク労働(チャレンンジ労働)起業する人の労働ポートフォリオは、このような感じだろう。リスク労働(チャレンジ労働)は当たったときは大きな見返りがあるが、リスクも高い。
おそらく多くのビジネスマンにとって、「起業」という選択肢は選べないだろう。わたしもその一人だ。多くの人は、起業するときひとつの会社しか立ち上げないが、わたしは同時に3つ以上の異なるビジネスを始めてみるべきだと考える。どれが当たるかわからないから、事業を分散させリスクヘッジしながらチャレンジし続けるほうが健康的に生きられると思うからだ。じっさいにわたしの周りで起業で成功した人は、複数の事業を試しながら成功する事業を見つけた人も多い。

圏外コピーライターの「労働ポートフォリオ」

わたしの現在の「労働ポートフォリオ」は以下のような状況だ。

A社にマーケティングマネージャーとして勤務をしているので、(※兼業可)安定した収入と、安定した成長する機会がある。

またA社に働いているからこそ、すぐにはお金にならないリスク労働(チャレンジ労働)にもチャレンジすることができる。

現在のところ、わたしのリスク労働は、金銭的メリットではなくじぶんがやりたいことベースでやっているが、たとえばストックオプションをもらうなどやり方を工夫すれば、大きな経済的メリットを狙える可能性だってある。

夫婦で電通をやめて、新しい働き方をつくることに挑戦します。
【参考】夫婦で電通をやめて、新しい働き方をつくることに挑戦します。

また、ひとつの組織に依存せず社会のいろんなところに居場所をつくれることは、それぞれの組織で培えるスキルやネットワークをコラボレーションさせ、よりじぶんがやれることが増えるとも感じる。

つまり安全労働とリスク労働をバランス良く構築することは、
最大限リスクヘッジしながら最大限チャレンジができ、じぶんの社会への居場所や無形資産(人的ネットワーク)も増やせるという、良いことづくしの働き方なのだ。

ただこの話を聞いて、「兼業や副業ができない大企業のサラリーマンはそんなことできないぞ!」と思われる人もいるだろう。そんな大企業のサラリーマンこそ、「労働ポートフォリオ」を考えるべきだとわたしは考えている。

大企業でもできる理想的な「労働ポートフォリオ」

電通も副業は禁止されているが、わたしが電通社員を続けていたのなら上のような「労働ポートフォリオ」を組んだだろう。

会社のなかで、稼げる仕事をしつつ、そのぶん短期的には稼げない新しいチャレンジ案件も行う。

かつ会社だけではなく社外でのNPO活動に参加したり、妻を個人事業主にして事業を立ち上げてみたり、いくらでも開拓できるのだ。「大企業に属してるから」というのはデメリットではなく、むしろ安全労働で培った金とスキルを「リスク労働」に投資できるという権利を手に入れている。大企業という魅力的な「安全労働」を活かさないのはもったいない。少しずつでもいいので、じぶんのやりたい「リスク労働」にチャレンジしていくことで労働ポートフォリオ全体のバランスを整えていくと、働き方や、生き方が大きく変わっていくはずだ。

大企業のビジネスマン、起業を考えている人、パラレルキャリアを実践している人、すべての社会人にとって、

労働ポートフォリオのバランスを整えるという「新しい働き方のシステム」はじぶんの働き方を見つめ直すよいきっかけになるのだ。


「新しい働き方による、新しい社会」

 

わたしは、一人ひとりが「労働ポートフォリオ」を意識して働くことで、世の中が構造的に大きく変わると考えている。

個人(ミクロ)の変化

労働者が、組織に属すという概念から、複数の組織を活用しながら、社会に属すという概念に変わる。

社会のさまざまなところに居場所ができ、それぞれで培ったネットワークやスキルを活かしながら一人ひとりがやれることが増えていく。

会社員というより、「社会員」のような存在になっていく。

わたしでいう、夫婦の新しい関係性をつくるなど、よりじぶんに合う働き方を追求していけるようになる。
「開業届」は、あたらしい婚姻届のかたちになる。/人生実験シリーズ①
【参考】「開業届」は、あたらしい婚姻届のかたちになる。

 

社会的(マクロ)な変化

一人ひとりの労働者が、様々な組織に属し自由に働くことは社会や資本主義にも大きなシフトが生じる。

なかでも一番大きな変化は、一人ひとりの労働者が「安全労働」で獲得したスキルとお金をベンチャーや新興企業に再分配を行うという、ベンチャーキャピタルのような存在になることだ。

いまお金やスキルが足りていない、世の中を変えるようなベンチャーにリソースが投資されていくことになる。社会に、人、金、スキルの好循環が生まれていく。

多くの経済学では「資本主義は成長する」という前提で語らられてきたが、残念ながら、現在の資本主義は成長しつづけてはいない。

しかし資本主義の主体が、「企業」から「個人」に変わることで資本主義は永遠の成長を手に入れられる可能性がある。

なぜなら企業や組織は、永遠に成長するかの保証はないが、「人が成長したいという思い」は永遠に続くからだ。

だから資本主義の根幹を企業や組織ではなく「個人」にシフトすることで、経済の成長率も大きく変わるはずだ。

 

これからの企業の採用活動に関して

この個人と社会の変革により、企業の採用活動も大きく変わっていく。すべて主観だが、これからの採用についても簡単にまとめてみた。

●これからの大企業の採用活動

大企業は「安全労働」として、最高に恵まれた環境だ。「安全労働」の選択肢として最適化し、「リスク労働」の手段も用意するというのが、大企業にいい人材を集めつづける求心力になる。

まずは大企業の資本を活かして「新入社員」を育てる環境を徹底的に用意することだ。そして「新入社員」から育てた優秀な人材を組織につなぎとめるために「出向」や「非常勤」や「出戻り制度」のような多様な働き方も用意することで、持続的な企業の成長につながるのではないか。


●これからのベンチャー企業の採用活動

ベンチャーに、いい人材を集めるのには「リスク労働」として最適化することだ。まずは、人がリスクをとってでも働きたくなるヴィジョンを用意すること。なるべくソーシャルインパクトが大きなヴィジョンを用意することが、魅力的な人材を惹きつけるパワーになるだろう。また「労働ポートフォリオ」を意識した多様な働き方も用意する。兼業を認めたり、労働時間も柔軟にしたり、また大企業からの出向なども、率先して受け入れる。そうすると、大企業のなかで優秀な人材も(そういう人材のほうが、リスク労働に興味があるため)こぞってベンチャーにも集まるようになる。大企業から人材を奪うのではなく、大企業と協力し「安全労働」と「リスク労働」のバランスを整えていくことが、それぞれに優秀な人材をつなぎとめるひとつの戦略になっていくのではないか。また、本当にヴィジョナリーでエネルギーにあふれる人材は、みずから起業するという道を選ぶかもしれないが、そういう人材の「リスク労働」や「安全労働」の選択肢として、大企業やベンチャーは環境を用意することがもとめられる。
●これからの転職エージェントの活動

転職エージェントは、ただ転職をお手伝いするだけではなく、一人ひとりの「労働ポートフォリオ」のプランニングをする新しい職種やサービスが生まれるだろう。真の意味で、一人ひとりのキャリアをサポートするサービスが誕生すると予測する。



最後に

わたしの主観で書きなぐってきましたが、上記の話と同じようなことを、最近読んだ本でも、まとめられていたので紹介します。(ここ最近読んだなかでは、いちばん刺さった本です)

逆説のスタートアップ思考

人が、それぞれの幸せを追求することで、この社会はもっとよくなる。

わたしは本気でそう思っているし、それを人生実験で実証してみようと考えています。

電通は、ブラック企業なんて言われたりもしますが、個人的には、とてもいい会社だと思っています。(あの事件は、極めて遺恨だし、マネジメントラインは変わっていく必要があると強く思いますが)

外に出たからこそ、電通のような大企業で働く人も、そしてベンチャーで働く人も、起業する人も、いろんな人がもっと幸せに働けたり、じぶんらしく生きていくために。そのヒントになりそうなことを自分の人生実験を通して、発信していきたいと思っています。

今後ともよろしくお願いします。

圏外コピーライター 銭谷侑