おうちを、家族文化の聖地にDIYしよう。/ 家族文化のデザイン②

おうちを、家族文化の聖地にDIYしよう。

 

「家族文化のデザイン」の2回目の投稿です。
外出自粛やリモートワークで、自宅にいる時間が増えるからこそ、家族と向き合ってみようという企画です。
前回は家族の大切にする価値観(コアバリュー)を考えることの効果や、その作り方について紹介しました。

参考:家族のコアバリューをつくろう。/ 家族文化のデザイン①
家族のコアバリューをつくろう。 家族のコアバリューをつくろう。/ 家族文化のデザイン①

今回からは、家族の大切にする価値観(コアバリュー)を、日々の家族体験にどうデザインしていくかの実験記録とノウハウを書いていきます。

家族のコアバリュー

1、なぜ「おうち」体験が大事なのか?

家族と過ごす時間がもっとも長い場所が、おうちです。
つまり、おうちでの体験を、家族の大切な価値観を自然と実践できる状態にデザインできれば、家族体験は大きく向上します。

ふだんから家族のコアバリューを意識するのは難しいです。(そんなの面倒です)
だからこそ、ただ生きているだけで、家族のコアバリューを体現してしまう・体現したくなる自宅空間をつくることには、とても大きなインパクトがあります。

 

前回の記事でも触れましたが、わたしはリクルートホールディングスで、働き方改革を進化させるべく「Employee Experience」をテーマに様々な実験をしてきました。そして、その働き方改革のノウハウを、家族改革に活かす人生実験をしてきました。

Employee Experienceとは、数年前から世界的に注目されている概念です。
一言でいうならば、働く体験(従業員体験)をどうデザインすることが、働く人の可能性を最大化できるのか。会社のコアバリューをみんなが実現できるのか。そのような視点で、入社前から退職後まで「働く体験」をデザインしていくことを言います。

なぜこの話をしたかというと、Employee Experienceでも「物理的空間(働く空間)」は、重要なキーワードです。Employee Experienceの第一人者Jacob Morganは、「PHYSICAL SPACE(物理的空間)」には、以下の4要素(C、O、O、L)が大事だと言っています。

参考:The Employee Experience Advantage (←Employee Experienceに興味のある方には、いちばんオススメな本です)

日本語にすると「友人や来客を呼びたくなるか」「柔軟性があるか」「組織のバリューが反映されているか」「働く場所を選べるか」。今回は「組織のコアバリューが反映されているか」にフォーカスします。

これは、どういうことかというと、今やインターネットの技術を駆使すれば、オフィスでなくても世界中どこにいても働くことができます。だから世界の企業のオフィスは、働くためだけの場所ではなく、会社の大切にするビジョンや価値観(コアバリュー)を感じる場に進化しています。

例えば、サンフランシスコに本社を構えるモバイル決済企業「Square」のオフィスは、何層か吹き抜けになっていて、中央に階段があります。その大階段がシアターも兼ねていて、CEOがビジョンや戦略を語ったり、社員同士が交流できる場になっています。

働くことにおいて、会社のビジョンや価値観を大切にする人が増えているからこそ、「組織の価値観と自分の価値観が重ねられること」がより求められます。だからオフィスも、それを感じられる場所に進化しているのです。これを、家族に当てはめると、こうなります。

 

★「家」=ただ家族が過ごす場ではなく、家族のコアバリューを感じられる場

 

つまり自宅は、ただ暮らすための場所ではなく、 家族のバリューを体感し、自然と体現したくなる場所に進化させることができるんです。

と、ちょっとだけ小難しい話をしたところで、実践の話に移ります。
おうちを、家族のコアバリューを感じられる場にDIYしたときに、どんな変化があるのか。実際にわたしの自宅で実験してみました。その手法や効果を公開します。

2、コアバリューを感じる空間をDIYしてみよう

順序1:家族のコアバリューをつくってみよう

こちらに関しては、前回の記事をご参考ください。
参考:家族のコアバリューをつくろう。/ 家族文化のデザイン①

美しい文章でなくてよいので、家族(全員)が大切にしたい価値観を話し合い、ことばにしてみましょう。

ちなみに、わたしの家族(夫婦)は、「お互いの可能性を広げるのを楽しむ。わたしたちの人生に価値のあるものづくりを通して、社会に貢献しながら生きていく。」というコアバリューをつくりました。妻がアートディレクターで、わたしがコピーライターなので、夫婦で何かをつくることがライフワークだからです。

順序2:コアバリューをDIYしてみよう

つぎは家族のコアバリューを感じられる空間をDIYしてみます。
ぼくらは、DIYのプロの友人にも協力してもらい、「人生を良くするものづくり」というわたしたちのコアバリューを空間にしてみました。

ウェルカムルーム
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玄関前の部屋に「家のスケルトン」モニュメントをつくりました。
これは「人生に価値のあるものづくり」を、ゼロ(骨組み)から作りだすことの象徴です。

ウェルカムルーム2
↑↑↑
「家のスケルトン」モニュメントの向かいには、本棚を起き、天板には今までじぶんたちがつくったプロダクトなどを並べてみました。

モニュメントと本棚を置くことで、玄関前の空間で「じぶんたちの価値観」と「今までのアウトプット」を体験できるようにDIYしてみました。
参考:夫婦で、理想の「事務所兼自宅」をDIYしてみました。

 

ぼくらは、友人にも協力してもらい、本格的にDIYしてみましたが、本来はちょっとしたことでいい気がします。すこしリビングルームや玄関、トイレを変えてみるなど。

例えば「いろんな所に旅をする!」という価値観を持っている家族なら、日本地図や世界地図を壁に貼って、行った場所に印をつけたり思い出の写真を貼っていくとか。「ありがとうを大切にする」という家族なら、ありがとうメッセージを付箋に書いて貼る空間をつくるとか。そういうシンプルなことで良いと思います。

大きさや作り込みが大事なのではなく、家族のバリューを、まいにち過ごす自宅の空間内につくることがポイントです。お子さんがいるご家庭は、「夏休みの自由研究」くらいの感じで手作りしてみると、ちょうどよいと思います。

3、DIYしてみた効果とは

わたしの家族で実験をしてみて、「おうちを家族文化の聖地」にDIYすることで、効果があったことを3つ紹介します。

効果1:コアバリューに立ち返られる

忙しい日々を送っていると、じぶんが何のために生きているのか、なぜ家族と生きるのか、大切なことも忘れてしまいます。
心に余裕をなくしたときも、家の中にコアバリューを感じられる空間があると、家族が大事にする価値観に立ち返ることができます。家族を尊重したり、優しくできる効果があると感じました。

普段から、家族のコアバリューを意識するのは疲れてしまいます。(というか、忘れます。)暮らしの中に家族文化をDIYした空間があることで、普段から意識しなくても、無意識の部分でもコアバリューを感じられる効果もあります。

あたり前の存在だからこそ、家族のことを改めて考える機会は少ない。だからこそ、無意識に働きかける「コアバリュー体験」は、家族の行動や体験に大きく影響を与えます。

効果2:DIYプロセスの中で、お互いのことを理解できる

家族のコアバリューを考えDIYするプロセス自体が、家族同士を深く理解し合えるプロセスにもなると感じました。身体をつかって「つくる」行為のなかで、家族の意外なところが見えてきたり、コアバリューを再考するきっかけにもなります。

じぶんたちのことほど、深く考えたり言語化することは、とても難しい行為です。
前回の「家族のコアバリューをつくろう。」の記事で、コアバリューを言語化することが難しかった人は、つくりながら考えてみるというのもひとつの手かもしれません。

頭で考えるだけではなく、アウトプットしながら家族のコアバリューを進化させていくことができます。家族文化は、常に成長していく一生プロトタイプなものだからこそ、じぶんたちでつくるというDIYのアプローチは相性が良いと思いました。

効果3:「家族文化」を語り、浸透させる場になる

上の写真は、親が遊びに来たときの写真です。
じぶんたちのコアバリューが、体験として人に伝わるのも価値だと思いました。それを楽しんでくれたり、遊んでくれたりすると、じぶんたちのコアバリューや家族文化をより好きになります。

また、こういう空間が自宅内にあると、自らのコアバリューを、家族内や友人たちに語る場にもなります。じぶんたちのことばで、じぶんたちの価値観やストーリーを共有する場をつくることで、コアバリューがより家族内に浸透し、家族文化が育っていくように感じます。

 

余談:ことばと文化の関係

 

コピーライターをしていると、企業の「ミッション、ビジョン、バリュー」開発のしごとの相談をいただくことがあります。簡単に言うと、かけがえのない企業文化をつくるための「ことば」をつくって欲しいという相談です。
(カロリー負荷が高いので、そういう案件を断りがちで申し訳ないのですが…)

 

個人的には、ことばをつくるだけでは、あまり価値がないと思っています。
ことばをつくっただけでは、規範やルールでしかありません。ことばをつくること以上に、「ことばを文化に育てていく設計」も同じくらい重要です。そのときに「体験」というのはとても大事なキーワードになります。

 

みんなが企業文化を体験し、一人ひとりが自らのことば(ストーリー)で語り出す場をつくる。そうすると、ミッション・ビジョン・バリューなどのことばに魂が入り、文化として育っていきます。

 

むしろ最近は、「ことばも体験のひとつ」だと捉えることもできると思いました。人が、ことばと触れるのも。ことばをつくるプロセスも。それも体験のひとつと捉えることもできるなと。ことばを表現ではなく「体験」と捉えたときに、経営や家庭に対して、ことばができることはたくさんあります。

 

コピーライターは、発明業であり、流通業であり、体験デザイン業でもあるんです。

 

と余談が伸びたところで、今回の記事は終わりです。
「おうちを家族文化の聖地にDIYすること」のプロセスや効果について話してきました。家族体験へのインパクト大ですので、ぜひみなさんのご自宅でも、実験してみてください。

次回も、また別のアプローチから「家族文化デザイン」の実験&ノウハウを紹介します!

©︎kengai-copywriter 銭谷 侑 / Yu Zeniya